電子的保存における、検索機能は、具体的にどのような要件があるのか?
電子取引情報の電子的保存の概要については、こちらで解説した通りです。
denshityobohozon.hatenablog.com
この概要で解説した中で、検索機能を確保ことが、実務上、重要と申し上げましたが、今回は、その検索機能の要件について、より具体的に解説します。
この点については、電子取引関係の一問一答の【問31】から【問34】において、解説されています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
まず、【問31】において、検索機能の要件を、以下のように、具体的に記載しています。
1 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること。
2 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
3 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
これら3要件を満たす必要があります。
まず、1については、取引日付、取引金額、取引先名、の3つ条件で、検索できることが必要とされており、難しい点はありません。
次に、2については、取引日付と取引金額については、範囲指定をして検索できることが必要とされていますが、範囲指定して検索とは、検索条件を一つではなく、ある範囲を持たせて検索することを意味します。
例えば、取引日付であれば、特定の一日だけではなく、何日から何日までの期間の取引を条件指定して検索できることを意味します。
また、取引金額については、特定の金額だけではなく、何円から何円までの範囲の取引を条件指定して検索できることを意味します。
次に、3については、1の3条件のうち、2つ以上の条件を組み合わせて検索できることが必要とされています。
例えば、取引先はAで、1月中の全取引のうち(取引日付を範囲指定しているという意味です。)、1万円以上(取引金額を範囲していしているという意味です。)のもの検索する、とした場合は、任意に、3つの条件を組み合わせて条件検索していることになります。
パソコンに疎い方には、ピンとこないかもしれませんが、一定のプログラムを利用すれば、このようなことは、パソコンにおいて実行できます。
ただし、これは、個人的意見ですが、このような検索機能を具備したプログラムを自社開発するには、相当の費用を要しますし、このような検索機能を具備したプログラムをクラウドサービスとして提供している会社も既に存在しているようですが、私が現時点で検索し、把握している限り、その利用料は、非常に高額であり、中小企業において、電子取引情報の電子的記録のために、プログラムを自社開発、または、そのためのクラウドサービスを利用することは、非現実的だと思います。(ただし、今後、より安価で利用が容易なサービスが提供開始される可能性はあると思いますが、現時点では、私は把握できておりません。)
しかし、その点については、国税庁も配慮しており、表計算ソフトを利用した運用方法を具体的に紹介し、そのような運用方法を容認しており、その点については、【問33】に記載しています。
具体的には、
1 一覧表の作成により検索機能を満たそうとする例
2 ファイル名の入力により検索機能を満たそうとする例
が紹介されています。
しかし、後述する特定要件を充たす事業者以外は、先述の検索機能を確保することが必要とされますので、1の方法を利用することが必要と、読むことができます。
【問33】で、具体的に紹介されている表は以下の通りです。
これはどういうことかというと、まず、表計算ソフトで、検索機能の要件にあった、3条件を必ず入力して、このような表を作ることになります。
次に、各取引に、連番、が付されていますが、対応する電子取引情報の電子データに、この連番をタイトルとして付して保存することになります。
こうすることで、検索機能の要件を満たした検索が可能になります。
まず、一般的に、表計算ソフトでは、検索機能の要件通りに検索することができます。
そして、検索された取引のうち、実際に電子取引情報の電子データの現物を確認したい場合には、電子データが保存されているフォルダにおいて、検索機能で、その取引の連番を入力すれば、その連番がタイトルで付されている電子データが検索され抽出され確認できることになるからです。
最後に、一方で、【問34】では、検索機能の確保が不要となる事業者の条件が、以下の通り記載しています。
1 個人事業者については、電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの期間の売上高、法人については、電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度の売上高が1,000万円を超えるかどうかで判断します。
2 なお、売上高が1,000万円を超えるかどうかの判断基準については、消費税法第9条の小規模事業者に係る納税義務の免除の課税期間に係る基準期間における課税売上高の判断基準の例によりますが、例えば、判定期間に係る基準期間がない新規開業者、新設法人の初年(度)、翌年(度)の課税期間などについては、検索機能の確保の要件が不要となります。
簡単に説明すれば、
1 消費税の免税事業者になれる条件に該当する場合
2 個人事業の新規開業者の初年度、初年度の翌年度
3 法人の新設法人は、初年度、初年度の翌年度
は、3要件の検索機能の確保は求めないということです。
ただし、これは、検索機能の3要件のすべては必要としない、といっているわけで、
一方、電子取引情報の電子データの電子的記録そのものを不要といっているわけではんなく、また、全くの検索機能を必要としないというものではない、と読めます。
つまり、上記の条件に該当する【問33】に記載されている例のうち、ファイル名の入力により検索機能を満たそうとする例、により、一定の検索機能を確保して保存することが必要だと思います。
ファイル名の入力により検索機能を満たそうとする例は、具体的には、【問33】において、このように記載されています。
2022 年(令和4年)11 月 30 日付の株式会社霞商事からの 20,000 円の請求書データの場合
⇒ 「20221130_㈱霞商事_20,000」
※ 取引年月日その他の日付は和暦でも西暦でも構いませんが、混在は抽出機能の妨げと
なることから、どちらかに統一して入力していただく必要があります。
これは、どういうことかというと、上記のような場合には、保存する電子データに、上記のようなタイトルを付して保存することを求めている、と読めると思います。
このようにタイトルを付して電子データを保存することで、最低限必要な検索が可能となります。(これだけでは、検索条件の範囲指定や、2以上の組み合わせによる検索が困難であるためです。)